
『家庭を小さな理想の国に』
あなたの家庭ではどんなふうに取り組んでますか?
深夜、中学生くらいの男の子たちが、自転車を2人乗りしてふらふら走っていきます。大人びたデザインのシャツと短パン、オイルでしっかり整えた髪型はまだ幼さの残る顔つきとは釣り合わず、かなりの違和感が。うしろの荷台に座った子がスマホのハンズフリー機能を使って電話をかけています。
「もしもし母ちゃん? 晩メシある?」
静まり返った町なかで、相手の“母ちゃん”が叫ぶ声もはっきりと聞こえました。
「晩メシ!? 作ってるわけないでしょう!」
夜遅く出歩いていても帰って来いと言われず、家に帰ってもごはんがないということは、この子には家に帰る理由がないということ。おそらくこの子はこの後仲間とコンビニにでも行き、食事とはいえないような粗末なもので空腹を満たしたことでしょう。
子どもと一緒に食べる『家庭のご飯』をおろそかにするということは、こういうことです。 これまでお伝えしてきたように、非行や暴力、無責任や無関心といった子どもの問題行動は、家族と一緒に食べる食事の回数の少なさと密接な関係があることがわかっています。
この子の家庭はいつからこうなってしまったのでしょう。この子が幼かった頃はこんな家庭ではなかったはずです。母親はこの子に十分な愛情をそそぎ、慈しんで育てていたはず。何時間も抱っこしたままあやし続けたり、この子の成長のために、健康のために、何を食べさせたらいいか毎日一所懸命献立を考えていたことでしょう。
それなのにいったいいつから母親は、この子の晩ごはんを気にしなくなってしまったのでしょう。もしもタイムマシンがあってやり直しがきくならば、どの時点まで遡ればやり直せるのでしょうか。
理想の家庭は、ただ漫然と過ごす中で形作られてゆくものではありません。家族みんなで理想の家庭像について話し合い、ルールを決め、同じ方向へ進んでいることを日々意識して、みんなで目ざしてゆくことが大切です。
どんな家庭を創りたいか、どんな家族になっていきたいか、家族でいろいろ想像して楽しみながら話し合うところからはじめてみてください。数年後、十数年後に、「タイムマシンであの頃に戻りたい」と後悔することのないように。
『キッズファミリー・ぐぅちょきぱぁ』128号掲載